発酵食品の身体に良い成分:ポリアミン

発酵食品が腸内フローラを改善し、腸の働き(消化吸収、免疫)を維持することで身体に良いということは、別の記事でご紹介しましたが、発酵食品には、それ以外の有用成分を含んでいます。このうち、最近、特に身体に良いと言われているポリアミンという有用成分についてお話します。

ポリアミン

納豆や味噌などの大豆発酵物、チーズやヨーグルトなどの乳発酵物、キノコ類、ナッツ類、貝類などに多く含まれる成分で、細胞を持つ生物に普遍的に存在します。ポリアミンは、細胞分裂や新陳代謝などの正常な細胞機能に必須の成分な成分です。アミノ酸の一種であるアルギニンやオルニチンから体内で合成されますが、人では加齢とともにその合成量は減少していきます。また加齢とともに炎症に関連するLFA-1というタンパク質がリンパ球の細胞表面に多く現れますが、血中ポリアミン濃度が低い人ほどこのたんぱく質が多く現れることが確認されています(参考資料-1、2)。ただ、食事でポリアミンを摂取すると血中濃度が上昇することが明らかになっています(参考資料-2、3)。人体には20種類ほどのポリアミンがありますが、特に重要なのはスペルミン・スペルミジン・プトレシンの3種類であり、様々な有用性が確認されています。なお、抗炎症作用や老化の抑制、動脈硬化の予防、美肌や爪や髪などの新陳代謝、DNAの保護、認知症予防、ガンとの関連性などについて世界中で研究されています。


参考資料-1、2、3

・血中スペルミン濃度と血中リンパ球の細胞表面 LFA-1 量の関係を調べたところ、血中スペルミン濃度が低いほど、 LFA-1 量は多いことが明らかになりました。また、健康な成人男性の血中リンパ球の細胞表面に存在する LFA-1 の量と年齢の関係を検討したところ、加齢に伴って LFA-1 量が増加することも確認されました。

・ネズミのエサにポリアミンを配合すると、無配合のエサを食べたネズミよりも血中ポリアミン濃度は有意に増加しました。また、ポリアミン配合エサを食べた群は毛並みや動きが良く、寿命も延びることが確認されました。なお、ネズミにおいてもリンパ球に存在するLFA-1 量は若いネズミ程度まで減少しました。

・健康な男性成人に毎日60g程度の納豆を食べ続けてもらった実験では、8 週間ほどで血中のスペルミン濃度がほぼ全員で上昇しました。

高ポリアミン食による哺乳類のアンチエイジング, 自治医科大学大学院循環器病臨床医学研究所, 早田邦康, Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 61(12), 607-624, 2014

抗炎症物質とアンチエイジング ,一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会/発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会HPより
自治医科大学附属さいたま医療センター 早田先生

Long-term oral polyamine intake increases blood polyamine concentrations, Soda etal., J Nutr Sci Vitaminol. 55:361-366, 2009.

納豆のポリアミン

納豆にもポリアミンは多く含まれるため、毎日納豆を食べることで、加齢による合成量低下に対して補充効果が期待できます。

特に納豆は納豆菌による無塩発酵食品のため、塩分を含んでおらず、納豆を食べても塩分の取り過ぎは起きません(タレの塩分を考慮しない場合)。チーズは塩分が多いため、食べ過ぎは避けるべきであり、納豆から摂取することがおすすめです。

ポリアミンを補充することで、アンチエイジング効果が期待できるため、今日から納豆を食事に取り入れましょう。

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