みなさんは『納豆』と聞くと、どんな『納豆』を想像しますか?
普通は、ネバネバに糸を引く「糸引き納豆」を思い浮かべると思います。
実は、全国には「〇〇納豆」と呼ばれるものがいくつもあるのです。
例えば、京都の「大徳寺納豆」、浜松の「浜納豆」、米沢の「雪割納豆」など、とにかく色々な『納豆』があります。
本記事では、全国の『納豆』を種類別に分けて解説し、そのなかで最も健康に良いと考えられる『納豆』を詳しく紹介します。
納豆の種類は?
納豆は大きく3種類に分類されます。その3種類が更にいくつかの種類に分類されて、様々な納豆になっているのです。
①糸引き納豆(いとひきなっとう)
ネバネバした糸を引く納豆で、納豆菌が生きているので冷蔵での保存が必須です。スーパーなどで普通に売られている冷蔵品の納豆になります。
糸引き納豆は日本で生まれ、既に室町時代には存在していたようです。
わらに包まれた「わらつと納豆」も糸引き納豆の1種です。
糸引き納豆は、煮た大豆に納豆菌を混ぜて発酵させることで作りますが、製造方法により下記の2種類に分類されます。
丸大豆納豆
大豆を丸ごと発酵させて作る納豆で、大豆の大きさや種類により細かく分けられます。
例えば、極小粒納豆や大粒納豆、国産大豆納豆、黒豆納豆など。
ひきわり納豆
大豆を挽き割り、皮を取り除いてから納豆菌で発酵させるため、丸大豆納豆より柔らかくて食べやすくなっています。
丸大豆納豆とは風味や栄養価が少し異なることが特徴です。
大豆を挽き割ることで丸大豆のままよりも表面積が広くなるため、発酵されやすくなり、丸大豆納豆と少し変わるのです。
なお、納豆菌は健康維持に有益な様々な機能性成分を作り出すため、糸引き納豆は『納豆』の中では一番健康によい『納豆』と言えます。
「糸引き納豆」に期待される健康効果についてはこちらのまとめ記事をご覧ください。↓
まとめ記事『【納豆のすごい効果のまとめ】健康維持に役立つ理由を徹底解説!』
②塩辛納豆(しおからなっとう)
中国から伝わったという説が有力であり、寺で作られていたため、「寺納豆」や「唐納豆」とも呼ばれます。納豆としての歴史は、糸引き納豆よりも古いです。
夏に、蒸した大豆とはったい粉を原料とし、麹菌で数日間発酵させたのち、塩水を加えて1年かけて熟成させ天日干しした納豆で長期保存がききます。
みそのように使える調味料として料理の味付けや隠し味に使われることが多いです。
塩辛い納豆で、京都の「大徳寺納豆」や「一休納豆」、浜松の「浜納豆」などが有名ですね。
納豆と付いていますが納豆菌による発酵物ではないため、厳密には納豆ではありません。
これは、現在の一般的な納豆は「煮た大豆を納豆菌で発酵させた糸引き納豆を指す」とされているためです。
麴菌が作り出す様々な酵素により大豆と小麦のタンパク質やでんぷんが分解され、身体に吸収されやすい形になっています。
糸引き納豆同様に栄養価が高い食品と言えますが、塩分が多いため使用量には注意が必要です。
③五斗納豆(ごとなっとう)
大豆1石(180L)で作ったひきわり納豆に、麹を5斗(90L)、塩を5斗(90L)加えて熟成させたところから、五斗納豆と呼ばれています。
山形県置賜地方の農家の保存食として伝えられる納豆で、米沢の「雪割納豆」が有名です。
煮た大豆を納豆菌で発酵させて作ったひきわり納豆に米麹と塩を加えて、4か月間ほど熟成発酵させた納豆で、主にご飯のおともとして食べます。
糸引き納豆を麴菌でさらに発酵させるため、納豆臭がほとんどないことが特徴です。
ただ、麴菌の強力なタンパク分解酵素によるタンパク質の分解が起こるため、ナットウキナーゼのような機能性タンパク質の活性は低下すると考えられます。
塩辛納豆と同様に塩を大量に含むため、食べる量は少量にした方がよいです。
それぞれの納豆に含まれる栄養成分を解説!
「ゆでた大豆」に比べて、「丸大豆納豆」「ひきわり納豆」「塩辛納豆」「五斗納豆」でどのような栄養成分に違いがあるかについて下記に解説します。
なお、種別は下記のように略しています。
- ゆで大豆:ゆ豆
- 丸大豆納豆:丸納
- ひきわり納豆:ひ納
- 塩辛納豆:塩納
- 五斗納豆:五納
種別 | タンパク質 | 食塩相当量 | 水溶性食物繊維 | セレン | ビタミンK | ビタミンB2 | ビタミンB6 | 葉酸 | パントテン酸 |
ゆ豆 | 14.8 | 0 | 0.9 | 2 | 7 | 0.08 | 0.1 | 41 | 0.26 |
丸納 | 16.5 | 0 | 2.3 | 16 | 600 | 0.56 | 0.24 | 120 | 3.6 |
ひ納 | 16.6 | 0 | 2 | – | 930 | 0.36 | 0.29 | 110 | 4.28 |
塩納 | 18.6 | 14.2 | 1.6 | 14 | 190 | 0.35 | 0.17 | 39 | 0.81 |
五納 | 15.3 | 5.8 | 0.9 | 8 | 590 | 0.35 | 0.19 | 110 | 2.9 |
引用:文部科学省発行の『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より抜粋
★可食部100g当たりに含まれる栄養素の量を示す
★それぞれの栄養素の量を示す単位は下記のとおり
・「セレン」「ビタミンK(ビタミンK1とK2の合算)」「葉酸」は『μg』
・「ビタミンB2およびB6」「パントテン酸」は『mg』
・「タンパク質」「食塩相当量」「水溶性食物繊維」は『g』
納豆菌による発酵で著しく増加する栄養成分
ゆでた大豆と比較して、「糸引き納豆」「五斗納豆」では納豆菌の発酵作用により作られたセレンやビタミンK2、ビタミンB群が多く含まれています。
特に「糸引き納豆」では食物繊維やビタミンB群(ビタミンB2、B6、葉酸、パントテン酸)、ビタミンK2が増加することが分かりました。
麴菌による発酵で著しく増加する栄養成分
納豆菌ほどの増加ではありませんが、麴菌による発酵においても、セレンやビタミンK2、ビタミンB群が増加しています。
ただし、麴菌発酵には雑菌の繁殖を抑制するために高塩濃度の環境下が必要です。そのため、食塩相当量が高くなります。
塩辛納豆と五斗納豆をおかずや調理に使用する場合は、摂取量に注意してくださいね。
納豆の発酵によって作られる栄養成分の健康効果
上記したように、日本の主要な3種類の納豆には「水溶性食物繊維」「ビタミンB群」「ビタミンK2」「セレン」などが多く含まれます。
これらの栄養成分が有する健康効果について下記に簡単にまとめました。
栄養成分 | 健康効果 |
水溶性食物繊維 | 便を柔らかくする、糖の吸収を穏やかにする |
ビタミンB群 | エネルギー代謝などに必須、粘膜や皮膚および神経の維持 |
ビタミンK2 | 骨折防止、血液凝固、骨粗しょう症予防 |
セレン | 抗酸化作用、甲状腺ホルモン生成に関わる |
まとめ|健康維持には『糸引き納豆』がおすすめ!
日本の主要な3種類の納豆について、発酵の違いや栄養成分の含有量について解説しました。
納豆菌や麴菌による発酵によって原料のゆで大豆よりも水溶性食物繊維やビタミンB群やビタミンK2が増加することをご理解いただけたことでしょう。
つまり、納豆には微生物の働きにより産生された『健康維持に有益な栄養成分』が豊富に含まれるのです。
これらのうち、『糸引き納豆』は食塩を含んでいないため、上記の3種類の納豆の中で最も健康維持によい納豆といえます。
また、糸引き納豆は、血栓予防効果を有するナットウキナーゼをはじめとする多くの機能性成分(健康に有用な成分のこと)を含んでいるのです。
糸引き納豆であれば、セレンの摂取上限やイソフラボンの摂取上限を考慮しても、1日2パックまで摂取できます。一方、その他の納豆は塩分が多いため、少量しか食べないようにしなくてはいけません。
消化吸収されやすいタンパク質やその他の健康維持に役立つ機能性成分を多く含む『糸引き納豆』を、ぜひ毎晩食べるようにしてください。
本記事を読んだ方が、納豆食を始めて頂ければ幸いです。
なお、納豆の健康維持効果については上記の『まとめ記事』および以下の『関連記事』をご覧ください。