納豆は日本で古くから親しまれているスーパーフードです。
そして、大豆を納豆菌で発酵させた栄養満点のネバネバ食品であることは、みなさんも良くご存知でしょう。
でも、納豆ってルーツが分かっていないってご存じですか?
また、下記のように納豆の詳しい正体を知りたいと思う人は多いのではないでしょうか?
『どうやって作られているのか?』
『どんな健康効果があるのか?』
本記事では、これらの疑問を解消するため、納豆のルーツと納豆の正体について徹底解説します。ぜひ、参考にしてください。
納豆のルーツについて
実は、納豆のはじまりについてははっきり分かっていません。
しかし、松本忠久氏の『平安時代の納豆を味わう』という本で、史実をもとにそのルーツの推察がなされています。
あまりにも記録がないため、確定できないことをご了承ください。
納豆のルーツにしては、大きく分けて下記の2つの説があり、松本氏は「国内独自起源説」を支持しています。
渡来伝播説:中国から伝わったとする説
疑問点
- 中国に「納豆」という言葉がないこと。中国から渡来したのであれば広く日本海側で納豆が受け継がれているはずであるが、京都以西では文献にすら記載がない。
国内独自起源説:日本で独自に発生したとする説
納得ポイント
- 偶然に発生した説には無理がない。
- 『わらに居る納豆菌』『煮豆(煮た大豆)』『適度な気温と湿度』が揃えば、納豆菌発酵が進み、納豆になるのは明白である。
- 奈良時代以前に「納豆」が存在したことを示す文献や遺物がない。
- 平安時代には「伊都(いと)」という名称で納豆が存在していたという文献(延喜式)がある。
- 「納豆」が伝来したものであれば、それを指すことばがあったはずだがない。
- 「伊都」や「納豆」という言葉は日本固有の言葉であり、近隣他国にはない。
- 平安時代中期の文献(新猿楽記)で初めて「納豆」ということばが使われた。
様々な納豆についての文献や資料を調査しましたが、上記のとおり理論に破綻がないため、松本氏の説は非常に信ぴょう性が高いと思われます。
私も松本氏と同意見です。伝承も考慮すると、東北地方(秋田県か岩手県)が発祥地かもしれません。
納豆はどのようにして生まれたのか?
下記の伝承にある通り、煮豆をわらに包んで馬で運搬する際に、偶発的にわらに居た納豆菌により煮豆が発酵したと考えられます。
納豆菌は枯草菌(枯れた草に住みつく菌)の1種であるため、わらに居ても不思議ではありません。
日本には『わら』『大豆』『四季』があったから
日本で偶発的に納豆が生まれた理由は、わらと大豆が生活に密着していたことと、日本には四季があることだと考えられます。
『わら』は一般的に食品や食品原料の包装に使われていたため、煮豆をわらに包んで運搬する際に納豆菌による発酵が起きたと考えるのが妥当でしょう。
湿気が高く気温が30℃以上の季節に馬の背中に乗せることで、馬の体温による保温効果も手伝って発酵に適した条件が整った可能性があります。
その後、煮豆を藁に包み、高湿度で保温するような簡易的な製法が生まれ、各家庭や商店などで作られるようになったのです。
しかしながら、藁には他の菌もたくさん付着しているため、納豆にならず腐敗して危険なものになる事も多かったと考えられます。
実際に大正時代に近代的な納豆製造が始まるまでは、このような不安定な状態での納豆作りのために死人が出たこともあるようです。
日本の納豆伝承はほぼ同じ
日本に残っている納豆伝承はどれもほぼ同じなので何か意図的なものを感じますが、実際、上記したように偶発的に発生したのだと思われます。
- 源義家(八幡太郎義家)が反乱を収めるために京都から岩手に行った際、馬の背中にのせた煮豆をつめた俵の中に納豆ができていた。
- 聖徳太子が馬のえさである煮た大豆をわらつとに詰めて木にぶら下げたところ、納豆になった。
- 加藤清正が煮豆を俵に詰めて馬の背中にのせていると納豆になった。
- 逃亡中の平家一族が煮豆を入れた俵を馬の背中にのせていたところ、納豆になった。
- 神棚にお供えした煮豆にしめ縄が触れ、納豆になった。
とにかく全てが『藁』と『煮豆』によるものですね。
製法が確立するまでは、条件がうまく揃ったときにだけ、美味しい納豆になったと考えられます。
ただ、とても美味しかったため、製法が模索され、納豆は広まりました。
なお、「源義家が岩手の伝統食だった納豆を気に入り、広めた」という説もありますが、この説も「国内独自起源説」を支持しています。
現在における納豆の作り方
大正時代に半沢博士が衛生的な製造方法を生み出したことで、納豆は安定的に製造できるようになりました。
納豆菌を発見した沢村博士、雑菌が混入していない純粋な納豆菌を集める技術を開発した松村博士、上記の半沢博士の3人のおかげです。
この納豆3博士がいなければ、納豆産業の発展はなかったと言っても過言ではありません。
納豆の物質面での正体は『大豆を納豆菌で発酵させたもの』
下記の工程により納豆を製造します。
納豆製造用大豆の選別
高品質な納豆製造のためには、原料大豆からの異物除去と粒径揃えをし、納豆製造に適した品質の大豆を選別することが必要です。
なお、納豆製造に適した大豆の品種については農林水産省から資料が開示されています。
大豆の洗浄および浸漬
雑菌繁殖を抑えるために、丁寧に水で洗浄することが必要です。そのあと、発酵準備として水に浸漬して吸水させます。
大豆の蒸煮
大豆を水で煮ると栄養成分や風味が減少するため、高圧下で蒸し豆にします。これを蒸煮といいます。
納豆菌液の準備
納豆菌液への雑菌混入を防ぐため、50℃の滅菌水を使い希釈することが必須です。
なお、日本の納豆製造に使われる納豆菌は大きく分けて「宮城野菌」「成瀬菌」「高橋菌」の3種類になります。
このうち、特に宮城野菌系の菌株を使う企業が多いです。きっと、宮城野菌は扱いやすくて美味しい納豆ができるのでしょうね。
納豆菌接種
蒸煮した煮豆の温度が70〜90℃になったら、煮豆を撹拌しながら納豆菌液をふりかけて接種します。納豆菌は100℃でも死なないため、雑菌繁殖を防ぐために高温下でおこなうのです。
盛り込み充填
納豆菌を接種した煮豆を規定量で容器(ポリスチレン製や紙製など)に充填します。
引き込み
容器に充填した煮豆をトレイに載せ、発酵室へ入れます。
発酵
温度と湿度を管理して納豆を発酵させます。
冷蔵熟成
5℃以下の低温で納豆菌の増殖を止め、納豆を美味しく熟成させます。
包装出荷
納豆の再発酵を起こさないように、5℃以下で作業することが必要です。
以上が、納豆づくりの基本工程となります。
納豆の健康効果
納豆には様々な機能性成分が豊富に含まれているため、色々な健康効果が期待できます。
納豆の機能面での正体は『栄養豊富で様々な健康維持に役立つ成分を有すること』
です。
納豆に含まれる有用成分と健康効果について、下記に簡単にお伝えします。
納豆の有用成分 | 健康効果(有用性、機能性) |
納豆キナーゼ | 血栓を溶かす働き |
ジピコリン酸 | 食中毒予防の働き |
ガンマポリグルタミン酸 | 免疫を活性化する働き |
レバン | 免疫活性化や整腸作用 |
ビタミンK2 | 骨折予防、骨粗しょう症予防、出血防止(新生児メレナ予防)などの働き |
ポリアミン | 抗炎症作用、老化予防、新陳代謝の正常化などの働き |
ビタミンB群 | 代謝や新陳代謝に重要 |
食物繊維 | 便通改善、腸内フローラの改善作用 |
イソフラボン | 骨粗しょう症予防やアンチエイジングの作用 |
サポニン | 強い抗酸化作用があり、脂質の酸化を抑える |
ミネラル(セレン、カリウム、モリブデンなど) | 微量元素は酵素や代謝に重要 |
大豆ペプチド | 抗菌作用や血圧低下作用、コレステロール低下作用 |
関連記事『【納豆のすごい効果のまとめ】健康維持に役立つ理由を徹底解説!』もご覧ください。
参考資料
『平安時代の納豆を味わう』松本忠久(丸善プラネット)
『納豆の起源』横山智(NHK出版)
『食品加工シリーズ5 納豆』渡辺杉夫(農文協)
『納豆の本』岩崎弘明(岩崎書店)
『謎のアジア納豆』高野秀行(新潮社)
『納豆の科学』木内幹ほか(建帛社)
『納豆大膳!』町田忍(小学館)
まとめ|日本で生まれた納豆を健康のために食べよう!
本記事では、以下について簡単にまとめました。
- 納豆のルーツは、恐らく日本各地
- 煮豆とわら、適度な温湿度の条件がそろったとき、偶然に納豆ができた!
- 納豆の製造方法
- 納豆に含まれる有用成分とその機能性(健康効果)
納豆は安くて美味しくて、最高のおかずですよね。
当ブログ(『納豆人甚Gene』:なっとうジンジンジーン、略称は『納豆ジーン』)では、健康寿命を延ばし、健康で長生きするための秘訣をまとめています。
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