腸内フローラ、育菌、腸活、数年前から大ブームですね。以前は、毎日のようにテレビで特集されたり、本や雑誌などで特集が組まれるほどでした。最近はテレビ離れもありテレビでの特集は減りましたが、ネットニュースやブログでは多くの記事が見つかります(このブログもその一つですが)。また、現在(2023年1月)でも、本や雑誌の特集は多いです。
でも、なんでこんなに記事が多いのでしょうか?
恐らく、それだけ身体の不調を感じる人が多いということの裏返しでしょう。また、コロナなどへの対策、健康への関心の高まり、高齢化なども大きく影響しているかと思われます。
現代社会では、忙しさ、人付き合い、取引先との関わり合い、モンスター出現(クレーマー、ペアレンツ・・・)など、仕事や生活における様々なストレスが増大しています。また、時間やお金の事情で質の高い食事ができず、ジャンクフードや栄養の偏った食事を摂ることが多くなり、人々の健康が害される原因になっています。
ストレスが健康を害する一番の理由は、腸は脳と深く相関しているということです!
これを、脳腸相関といいます。公益財団法人 腸内細菌学会では、以下のように説明されています。
脳と腸は自律神経系や液性因子(ホルモンやサイトカインなど)を介して密に関連していることが知られている。この双方向的な関連を“脳腸相関(brain-gut interaction)”または“脳腸軸(brain-gut axis)”と言う。
つまり、消化管の情報は神経系を介して大脳に伝わり、腹痛・腹部不快感とともに、抑うつや不安などの情動変化も引き起こす。そして、これらの情動変化が副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF: corticotrophin releasing factor)や自律神経を介して消化管へ伝達され、さらに消化管の運動異常を悪化させることになる。
例えばストレスによって消化管機能障害を呈する過敏性腸症候群では、ストレス刺激によって誘発されたCRFは視床下部や脳幹にあるCRF type 2受容体を介して胃・十二指腸の運動を抑制するが、一方、CRFはCRF type 1受容体を介して結腸運動亢進を起す。
逆に、消化管内腔の粘膜細胞に刺激が加わると、この信号は迷走神経や脊髄求心神経を介して延髄や視床、皮質へ伝えられ、いわゆる“内臓知覚”を形成する。
ちょっと専門用語が多すぎて難しいので、簡単に説明しますね。
腸脳相関について
『腸内環境が良い』と腸では腸内細菌から幸せホルモンである『セロトニン』が作られ、その効果で脳は『元気で幸せ』だと感じます。
しかし、『腸内環境が悪い』とセロトニンがあまり作られず、脳は『不安』を感じ、鬱やまた、脳が強いストレスを感じたら、『下痢や便秘を起こす指示』を出すため、腸は過敏性腸症候群のような症状を起こします。
このように腸と脳はそれぞれが受け取った刺激(情報)をやり取りする密接な関係にあるのです。まるで、親密な恋人同士のようなものです。遠く離れた臓器なのに驚きです。
つまり、脳と腸と腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:ヒトや動物の腸内で一定のバランスを保ちながら共存している多種多様な腸内細菌の集まり、腸内フローラとも言われる)の関係性が崩れると健康に大きな影響が出るということです。
ストレスは外的要因に基づくことが多く、無くすことは非常に難しいと思われます。物の見方や考え方を少し変えて、我慢できる範囲のストレス強度に変えることも大切ですが、なかなか難しいでしょう。
つまり、健康への脳からのアプローチは少しやっかいであると言えます・・・。
では、どうすれば健康につなげられるかと言いますと、自分で積極的に取り組むことが出来る『腸活(育菌)』です!
腸内環境は、食べるもので短期間に変えることが出来るため、腸からのアプローチの方が簡単です。まずは、食べ物で腸内環境を整え、健康でストレスに強い身体作りを目指しましょう。
腸内環境を整えることを腸活といいますが、身体に良い影響を与える菌(善玉菌という)を増やすことが腸活の一番の近道であるので、良い菌を増やすことから『育菌』とも言われます。
腸内環境の整った健康な状態の腸内フローラのバランスは、
善玉菌:悪玉菌(身体に悪い影響を与える菌):日和見菌(ひよりみきん:善玉菌にも悪玉菌にも協力する菌)=2:1:7 くらいだと言われています。
なお、人の腸内には細菌がおよそ1000種類、100兆個も生息していることが知られています。すごい数ですね。
善玉菌 | 悪玉菌 | 日和見菌 | |
細菌名 | ビフィズス菌 乳酸菌(ラクトバチルス、 ラクトコッカスなど) 酪酸菌 納豆菌 など | クロストリジウム ウェルシュ菌 大腸菌(毒性株) ブドウ球菌 バクテロイデス など | 連鎖球菌 大腸菌(無毒株) バクテロイデス など |
働き | 腸内で発酵作用を行なう有益な菌類。乳酸や酢酸、酪酸を産生し、腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える。 腸内でビタミン類などの有用成分を作る。 | 腸内で分解・腐敗作用を行なう菌類。アンモニア等を産生し、腸内アルカリ性にする。悪臭のもととなるガスや、大腸がんの原因ともなる腐敗物質を生成する。実は全くゼロでもダメ。 | 身体の状態により有用にも有害にも働く。善玉菌、悪玉菌のうち、優勢な菌と同じ働きをする。 |
理想の割合 | 2 | 1 | 7 |
腸活のやり方
納豆を食べることでも腸活になりますが、基本的な腸活のやり方を説明します。
善玉菌を増やす
善玉菌のエサを摂取する。善玉菌が好むエサ、すなわち発酵原料になる栄養成分は、水溶性食物繊維やオリゴ糖(ブドウ糖なのが複数個つながってできた糖質)です。
また、発酵食品には、善玉菌を増やす効果があります(発酵により作られた物質が善玉菌を活性化したり、エサになるため)。オリゴ糖を多く含む食材、食品には、ゴボウ、バナナ、納豆、大豆、玉ねぎ、牛乳、などがあります。
水溶性食物繊を多く含む食材、食品には、抹茶、もち麦(押し麦)、ニンニク、ライ麦、オーツ麦(オートミール)、納豆、ゴボウ、海藻、オクラ、山芋、などがあります。
悪玉菌を減らす
悪玉菌は、腐敗や分解を主に行なうため、その原料になるタンパク質や脂質、糖質が大好きです。
そのため、肉類の過剰摂取や脂っこいもの、甘いものの食べ過ぎは悪玉菌を増やしてしまします。つまり、肉類や脂っこいもの、甘いものを食べ過ぎないようにすることが大切です。ただし、タンパク質も脂質も糖質も身体に必須な成分であるため、必要量は食べる必要があります。
そこで、大事なのは、前述した通り、『バランスの良い質の高い食事をする』ということです。
バランスの良い質の高い食事をする
一日の摂取目標を栄養成分をエネルギー摂取量でおおまかに示します(日本人の食事摂取基準 厚生労働省 (mhlw.go.jp)より)。
18歳以上の男性では、タンパク質65g前後(エネルギー摂取量の割合として20%未満)、脂質(エネルギー摂取量の割合として20~30%)、炭水化物(糖質、エネルギー摂取量の割合として50~65%)、食物繊維20g以上となります。
18歳以上の女性では、タンパク質50g(エネルギー摂取量の割合として20%未満。ただし、妊娠中期で+5g、後期で+25g、授乳婦では+20g)、脂質(エネルギー摂取量の割合として20~30%)、炭水化物(糖質、エネルギー摂取量の割合として50~65%)、食物繊維18g以上となります。
バランスの良い食事を摂るための目安については、以下の図(農林水産庁 HPより)を参考にしてください。
余分な栄養分を排出する
過剰摂取して消化/吸収されなかったタンパク質、脂質、糖質(ブドウ糖や果糖、砂糖などの単糖類や二糖類)は、特に、大腸に生息する悪玉菌によって分解され、アンモニアや硫化水素といった有毒なガス発生の原因となります。
また、インドールやフェノールといった発がん性物質も発生します。便秘になっていれば、どんどん分解と腐敗が進み、より多くの量が発生することになります。便秘中のおならや便が臭いのはこのためです。
そこで、余分なこれらの栄養分を便として排出することが大切です。そのためには、食物繊維の摂取が有効です。
食物繊維には、水に溶ける水溶性食物繊維(善玉菌のエサになる)と不溶性食物繊維(水に溶けないもの)の2種類がありますが、そのどちらも効果があります。
水溶性食物繊維は、脂質や糖質を包み込むことで吸収を抑制したり、悪玉菌に分解されにくくしたりする働きがあります。
不溶性食物繊維は、水を吸って大きくなることで便のかさを増すことで腸管を刺激し、蠕動運動を活発化して便の排出を促す効果があります。つまり、余分な栄養分を早く排出させ、悪玉菌のエサにならないようにします。
ただし、不溶性食物繊維を大量に摂取しすぎると逆に便秘の原因になるため、水溶性のものとバランス良く摂取することが大切になります。不溶性食物繊維が多い食材、食品には、抹茶、干し柿、おから、ゆで小豆、ライ麦、ゆで大豆、アーモンド、オーツ麦、納豆、オクラ、大麦(押し麦)、ゴボウ、ブロッコリー、キノコ類、などがあります。干し柿は甘いため、1日2個が上限ですが、便秘改善に役立つそうです。
まとめ
腸活を実践するには、水溶性と不溶性食物繊維をバランス良く含む、大麦(押し麦)、納豆、オクラ、大豆などを毎日の食事に取り入れることが腸内環境改善には効果的です。
押し麦はお米の2~3割を押し麦にし、納豆は毎晩1パック、オクラや大豆は、サラダや煮物、みそ汁など色々な料理に使えます。山芋や海藻、ゴボウ、キノコ類も色々なバリエーションで食事に取り入れることが可能です。
腸内フローラは、自分の食べたもので変わるため、意識して食事をしないと、整えることは難しいです。
是非とも、みなさんも、食事に2品ほど、これらの副菜を取り入れてみてはいかがでしょうか?
納豆なら、そのまま食べられますので簡単に1品は増やせます。おすすめです!
納豆の健康効果のまとめ記事もご覧ください。
『【納豆のすごい効果のまとめ】健康維持に役立つ理由を徹底解説!』
納豆は塩を含まないため、食べ過ぎに注意すれば、たんぱく質や食物繊維の不足分を補えます。また、疲れに効くビタミンB群を豊富に含み、健康効果を示す成分を多く含む、スーパーフードです。安くて高い機能性を有する納豆を毎日食べないと損ですよ。
納豆を使ったうどんやおやつのレシピもご覧ください。