みなさんは、納豆に食物繊維が含まれていることをご存じですか?
実は、納豆にはかなりの量の食物繊維が含まれているんですよ!
「納豆を食べるとお腹に良い!」
「納豆はダイエットに最適!」
上記のようなネット記事をよく見かけますが、これは納豆に豊富な食物繊維が含まれているからなのです。
本記事では、納豆の『食物繊維』の種類やどのような健康効果があるのかを徹底解説します。
これまで食品などの研究開発や商品開発などに携わってきた元研究者の私が、これまでの経験や知識を活かして納豆の健康効果についてまとめていきますので、ぜひご覧になってください。
食物繊維とは?
納豆に豊富に含まれる食物繊維について解説する前に、食物繊維について簡単に説明します。
食物繊維とは「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されており、小腸で消化/吸収されずに、大腸まで達する食品成分です。
便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。
現状のほとんどの日本人で1日の摂取量が不足しており、積極的に摂取することが推奨されている食品成分です。
食物繊維は大きく2種類あり、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分類されます。
納豆にはこれら2種類の食物繊維がバランスよく含まれているのです。
日本人は1日に4~5g程度の食物繊維が不足しているため、納豆1パック(40g)で2.7gを摂取できれば不足分をかなり補なうことができます。
厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
不溶性食物繊維とは?
不溶性食物繊維は、水に溶けない食物繊維です。野菜に豊富に含まれる「セルロース」「リグニン」が該当します。「ヘミセルロース」「キチン」「キトサン」なども不溶性食物繊維の仲間です。
不溶性食物繊維の働き
不溶性食物繊維は水を吸って体積が増すため便のかさ増し効果があり、腸管を刺激し腸の蠕動運動を促進します。したがって、便通改善効果が期待されるのです。
また、便の滞留時間を短くするため、大腸内で悪玉菌の増殖を抑制します。これにより腸内環境が改善され、悪玉菌の代謝物である発がん性物質や悪臭(スカトールなど)などが減少するのです。
水溶性食物繊維とは?
水溶性食物繊維は、水に溶ける食物繊維です。大麦、果物、海藻、ネバネバ食材などに多く含まれます。
水溶性食物繊維には「オリゴ糖」「βグルカン」「ペクチン」「グルコマンナン」「アルギン酸」「アガロース」「アガロペクチン」「カラギーナン」「ポリデキストロース」「イヌリン」「難消化性デキストリン」などが挙げられます。
水溶性食物繊維の働き
水溶性食物繊維には、摂りすぎると病気の原因にもなる「脂質」「糖」「ナトリウム」などを吸着して身体の外に排出する働きがあります。
そのため、水溶性食物繊維を摂ることは生活習慣病(肥満/脂質異常症(高脂血症)/糖尿病/高血圧)の予防や改善に効果が期待できるのです。
また、善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌のエサとなるものがあり、腸内で善玉菌の増殖を促進して腸内環境改善に寄与することが確認されています。「オリゴ糖」「ポリデキストロース」「イヌリン」などが該当します。
厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」
納豆に含まれる食物繊維は?
納豆にはいくつかの食物繊維が含まれており、これらが納豆の健康効果に寄与するのです。
これらの食物繊維についての解説を下記に記載します。
納豆に含まれる食物繊維について
納豆には大豆由来の食物繊維と納豆菌による発酵で産生される食物繊維の両方が豊富に含まれます。
大豆由来の不溶性食物繊維
セルロースなどが含まれます。
大豆由来の水溶性食物繊維
ラフィノース、スタキオースという難消化性オリゴ糖である大豆オリゴ糖が含まれます。
納豆菌発酵により作り出された水溶性食物繊維
納豆菌が作り出すレバンが豊富に含まれます。
レバンは、フルクトース(果糖)がたくさん連なった重合体の末端にグルコース(ブドウ糖)を持つ多糖類であるフラクタンの1種です。
納豆に含まれる食物繊維はバランスが良い!
納豆に含まれる不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の割合は、2:1であり、腸内環境改善にとっては最適のバランスとなっています。
実は、不溶性食物繊維ばかり摂取すると、逆に便が硬くなりすぎて便秘を引き起こす場合もあるのです。
また水溶性食物繊維を過剰に摂取すると、下痢症状を引き起こす恐れや必要な栄養素まで吸着して排出してしまい栄養失調につながる恐れもあります。
「食べ過ぎてもこれを飲めば大丈夫!」と訴求している健康食品の中には、水溶性食物繊維を過剰に含むものもありますので、継続して服用することには注意が必要です。
納豆に豊富に含まれる食物繊維の健康効果
納豆の食物繊維が関与する健康効果は『整腸作用』です。
整腸作用に起因して『アレルギー低減効果』も現れると考えられます。
納豆の整腸作用
それでは、食物繊維による『整腸作用』などについて解説します。
納豆を食べると、お腹の調子が良くなることが確認されています。
みなさんもご存じの通り、納豆菌を含有した整腸剤は各医薬品メーカーから薬として販売されていますので、納豆に整腸作用があることは医学的に完全に認められているのです。
実際、私もほぼ毎日納豆を夜ごはんに食べてますが、便秘になった記憶がありません。
須見教授の納豆研究報告
倉敷芸術科学大学の須見名誉教授はその著書の中で、納豆の整腸作用についても語られています。
それによりますと、納豆には多くの食物繊維が含まれるため、便秘を予防したり、発ガン性物質の排出を促したりすることで整腸作用を示すとのことです。
また、納豆菌は空腸から回腸にかけて発芽増殖し、栄養型細胞として数週間程度存在するため、酵素やビタミン、その他の発酵産物が生成され、腸の働きを維持する働きを示すとのことです。
寺田先生の納豆研究報告
寺田先生らの研究では、健康な人に1パック(50g)の納豆を1週間食べてもらい、腸内フローラの変化を調べました。
食べる前では善玉菌であるビフィズス菌の割合は15%でしたが、1週間食べ続けると36%まで増加、2週間食べ続けると39%まで増加、食べるのを止めて1週間経つと21%まで低下したそうです。
つまり、納豆を食べ続けることで、年齢とともに減少していくビフィズス菌の数を増やすことが出来るということです。
また、納豆摂取中に短鎖脂肪酸(酢酸などの有機酸など)が有意に増加しました。
さらに、納豆摂取中に腐敗産物(フェノール、スカトールなど)が有意に減少し, 大腸内のpH(水素イオン濃度)も有意に低下したそうです。
以上の結果から、納豆摂取によって腸内フローラのバランスが整い、腸内環境が改善することが確認されました。
『奇跡の納豆パワー』 須見洋行著
Effect of the Fermented Soybean Product Natto on the Composition and Metabolic Activity of the Human Fecal Flora, terada et all, Jpn. J. Food Microbiol., 16(4), 221-230, 199
関連記事『女性必見!【納豆の腸内環境改善効果】美肌や腸活に役立つ機能性成分を徹底解説!』もぜひご覧ください。
納豆によるアレルギー低減効果
納豆による整腸作用により免疫の正常化が起こり、アレルギー低減効果がもたらされると考えられています。
確認されている事象としては、子供のアトピー性皮膚炎や花粉症の症状改善効果です。
下条教授の研究では、妊婦さんが毎日納豆を食べると、生まれてきた子供の生後6か月検診でのアトピー性皮膚炎の発症率が有意に低下したそうです。
また、納豆の食物繊維であるレバンが花粉症の症状改善に役立つという研究成果や特許があるのです。
これらの結果から、納豆にはアレルギー低減効果が期待できると考えられます。
詳細は関連記事『【徹底解説】納豆を食べると『アレルギー低減』が期待できる理由!』をご覧ください。
まとめ|納豆の豊富な食物繊維は整腸作用をもたらす
納豆に豊富に含まれる食物繊維によって、腸内環境が整い、整腸作用がもたらされることが確認されました。
また、納豆菌を含有した整腸剤は各医薬品メーカーから薬として販売されていますので、納豆に整腸作用があることは実は医学的にも完全に認められているのです。
最大の免疫器官である腸が整うと免疫が正常化することが明らかになっています。
つまり、納豆の食物繊維による整腸作用により妊婦さんと胎児にも良い影響が現れ、免疫が正常化することで生後6か月でのアトピー性皮膚炎発症率が低下したと考えられます。
食物繊維の整腸作用により免疫が正常化するため、食物繊維を毎日5g程度追加するためには、納豆に加えて、オクラや長いもなど食物繊維を多く含む食材を摂ることはとても効果的です。
本記事を参考にして、納豆を毎日食べて健康維持をはかりましょう!
関連記事『【納豆の栄養-03】健康成分(セレン/ビタミンB2/レシチン/コリン)と効果』もご覧ください。
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